コラム5 マイクロ・マクロ社会心理学から適応論的アプローチへ
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恩師
行為者に偏見がない場合でも、合理的意思決定の帰結として差別(統計的差別)が生まれ、かつ、それによってさらに現実が維持されうること(予言の自己実現) 個々人の心(マイクロ)だけを見ていても説明できない社会現象(マクロ)があり、相互依存関係とそれに基づく意図せざる結果としての創発特性が生まれる、マイクロ・マクロ過程 個人と個人、個人と集団、集団と集団の関係を、相互依存関係を通した資源の交換という側面に着目して分析する社会的交換理論の観点から、内集団びいきや協力行動などに関する研究に取り組んだ 社会的交換の分析では、基本的には合理的選択、あるいは、強化の原理によって資源交換を捉えるため、一見すると非合理的に見える行動、例えば1回限りの囚人のジレンマゲームにおける協力行動をうまく説明できなかった ところが、進化の原理を用いると、この一見非合理な行動が結果として合理的となる特定の相互依存関係があり得ること、つまり、適応的な利得構造を有する相互依存関係がヒト社会にはあるだろうということが予測可能となる
こうして適応論的アプローチに出会ったことで1回限りの囚人のジレンマにおける協力問題は、私の中ではヒトの向社会性の進化の謎へとつながっていった 彼らのラボで2年観、ポスドク研究員として過ごす幸運を手に入れた
ヒトの向社会性の進化の謎は未だに論争が続いている
適応論的アプローチはそういった学祭研究をつなぐ共通言語そのものである