コラム5 マイクロ・マクロ社会心理学から適応論的アプローチへ
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清成透子
恩師
山岸俊男
行為者に偏見がない場合でも、合理的意思決定の帰結として差別(統計的差別)が生まれ、かつ、それによってさらに現実が維持されうること(予言の自己実現)
個々人の心(マイクロ)だけを見ていても説明できない社会現象(マクロ)があり、相互依存関係とそれに基づく意図せざる結果としての創発特性が生まれる、マイクロ・マクロ過程
個人と個人、個人と集団、集団と集団の関係を、相互依存関係を通した資源の交換という側面に着目して分析する社会的交換理論の観点から、内集団びいきや協力行動などに関する研究に取り組んだ
社会的交換の分析では、基本的には合理的選択、あるいは、強化の原理によって資源交換を捉えるため、一見すると非合理的に見える行動、例えば1回限りの囚人のジレンマゲームにおける協力行動をうまく説明できなかった
ところが、進化の原理を用いると、この一見非合理な行動が結果として合理的となる特定の相互依存関係があり得ること、つまり、適応的な利得構造を有する相互依存関係がヒト社会にはあるだろうということが予測可能となる
こうして適応論的アプローチに出会ったことで1回限りの囚人のジレンマにおける協力問題は、私の中ではヒトの向社会性の進化の謎へとつながっていった
ヒトの向社会性の進化に関心のある進化心理学、数理生物学、行動生態学などを専門とする研究者たちとの交流を通して、自然と私の研究の軸足は社会心理学からより学際的な場に移っていった
マーティン・デイリーとマーゴ・ウィルソン
彼らのラボで2年観、ポスドク研究員として過ごす幸運を手に入れた
罰と報酬が協力行動に与える影響に関する研究を、当時大学院生だったパット・バークレイと開始した
ヒトの向社会性の進化の謎は未だに論争が続いている
近年では、脳神経科学や内分泌学的研究も増え、一層学際的になった
適応論的アプローチはそういった学祭研究をつなぐ共通言語そのものである